舞台本番前日、2017年2月24日(金)
劇場入りする前にオイラが向かったのは病院だった。点滴、エコー検査をした。その検査の際、医師に言われたのは「もう少し詳しく調べた方が良さそうな所があるんで、大きな病院で診てもらうことをお勧めします」
まぁ、嫌な想像や予感は働くけど、この時はそれどころじゃない。行かなきゃ、向かわなきゃ。明日は舞台本番、初日! 今、劇場はオイラ待ち。既にセットも組まれ、照明音響もスタンバイOK 場当たりを進めなければならない!
平成28年度 宮崎市民プラザ自主事業 ユニット「あんてな」
『カントリーのロード〜青島に続く道〜』
宮崎市民プラザさんから委託を受け、宮崎市内を舞台にした物語を、宮崎の役者さんを中心に作り上げた、キャスト33名、スタッフ当日のお手伝いさんも含めれば約70名。間違いなく100名を超える方々に連日携わって頂いた超大作。オイラ自身、思い入れも強い作品です。
物語を簡単に。宮崎の青島にある民宿、ブルームーンを営む村島亮平とさちの夫婦。そしてそこにやってくるいろいろ訳ありなお客さんたちを宮崎の春夏秋冬と共に過ぎていく日々を描きました。ペテカンの濱田龍司、四條久美子も出演してくれて、更には、インフル対策、本番前ギリギリでの代役、無かったとしても、スーパー裏方として同じくペテカンの大治幸雄も参戦してくれました。インフル出ずに大治は裏方全う。何れにしてもこの三人の存在は頼もしかった、ありがとね。
さて『カントリーのロード〜青島に続く道〜』2日間での2ステージ。2日目終了後にはアフタートークもあってね、いろいろ裏話をしました。「あんなことが面白かった」「こんなことが大変だった」「エコー検査で『もう少し詳しく調べた方が良さそうな所があるんで大きな病院で診てもらうことをお勧めします」って言われた。
ってね、もちろん最後のそんな話はずっと隠してね。知ってたのは奥さんだけで、ペテカンメンバー3人に伝えたのは打ち上げ終わりで宿舎に帰り着いた階段登りながらだった。
2017年3月3日 ご紹介頂いた大きな病院で詳しく検査し、ここで医師に言われたのは、
「大丈夫でしょう。特に大きな悪い部分は無さそうです。念のため、MRIの検査までしておきましょうか」という診断でした。
良かったぁー。ホッと胸をなでおろす自分。「いや、そりゃそうだよ、ここで「癌です」なんて言うわけがない。さぁ、当たり前の日常に戻ろう。「ありがとうございました」立ち上がろうとするオイラを止めたのが奥さんの一言でした。
「念のため、もう一度詳しく検査してもらえませんか?」
え?嘘でしょ?医者が「大丈夫」って言ってんだから大丈夫に決まってるじゃん。そんなこと言わなくていいから行こうぜ。頭の中では9割2分8厘そう固まっていたんだけど、口から出たのは
「だな。念には念を。一応やっておくか」
まぁね、普段から頭上がりませんしね(笑)
「その方がね安心材料になると思いますし」
「年齢的にも大丈夫だとは思うんですが」
「一応ね、一応」
そう言う会話が飛び交ったことをボンヤリ覚えてる。
そのことを病院を出て心配していた両親に伝えたら「安心するからやっとけ」って言葉と同時に「大丈夫、うちは癌家系じゃないから」親父がそう言ってくれて「だよね」だからこそやっとこやっとこ。そんな感じだった。
結論から言うとね、この時の奥さんが言ってくれた「念のため、もう一度詳しく検査してもらえませんか?」がめちゃくちゃ大きくてね。言わなかったら発見が遅れてたかもしれないし、もっとかもしれないし、それは言いだすとキリないし、誰が悪いわけじゃないし、まぁ、それくらい大変で厄介な病気、それがすい臓がん。
2017年3月29日入院再検査。翌30日退院。
この間もね、特別体調が優れないとか、食欲がないとか、吐き気があるとか、スライダーのキレが悪いとかないんですよ。いたって普通。脚本に携わらせて頂いた映画『スプリング、ハズ、カム』がオイラの地元延岡にある延岡シネマで上映が決まり、ちょうど独演会でいらっしゃった柳家喬太郎師匠と舞台挨拶をさせて頂いたりした時期。
で、この2日後ですね。
2017年4月7日 私、本田誠人、突然ではありますが【すい臓がん】の告知を受けました。
この時点で伝えられたのはステージ4。
続いて突然だけど、ここでオイラの好きな言葉をひとつ。
イギリスの詩人、バイロンの言葉で・・・
『事実は小説より奇なり』
聞いたことあるでしょ?
でもこの言葉は正確には好きだからこそ、大嫌いな言葉。
だってこの言葉に負けてしまったら脚本家なんて必要ないからさ。
もし良ければ、お時間ございましたら、ユニット「あんてな」舞台『カントリーのロード』のダイジェストをご覧いただけたら嬉しいです。こちらからどうぞ➡️➡️➡️https://youtu.be/HfqlmP_ys8s
この『カントリーのロード』オイラも役者として結構大事なキーマンとなる役どころで出てるんでうが、オイラ自身、自分に書いた役。
しょんべん小僧役でした。
あ、やっぱり顔色がちょっと悪いね・・・。
このお腹になんか悪いもんがあるんだからね、凄くね?笑いと悲しみ、表裏一体、我ながら最高なキャスティング。
え?笑えない!?
ほらほら、一日一笑!